■第一章 目的と理論


すべての電池の起電力は、これを2つの単極電池の起電力の和と考えると便利である。単極電池は、電極がイオン溶液に対して持つ電位で、金属の電極では極を囲む溶液中の金属イオンの活動度によって変化する。
金属電極がそのイオンを含む溶液に浸されるときの、電極における反応は金属の原子価をnとすると
  Mn+ + ne = M   ・・・(1)
(酸化体)     (還元体)
で表わされる。上式が平衡に達したとき、金属に対して一定の電極電位を示す。
以上のような電極が電解質溶液と接触して構成されている系を半電池といい、これが2つ組み合わされた系をセルまたは電池という。そして、電池に生ずる電位を起電力という。
ネルンストによると水素イオンの関与する酸化還元、及び、その平衡電極電位は、式(2)(3)で表わされる。
 Ox + ne + nH+ = Red             ・・・(2)
 E=Eo+{(RT)/(nF)}×ln{[Ox][H+ ]/[Red]} ・・・(3)
また水素イオンの関与していない場合は
 E=Eo+{(RT)/(nF)}×ln{[Ox]/[Red]}    ・・・(4)
となる。
ここで、式(1)の電極電位をネルンストの式で表わす。この場合は水素イオンが関与していないので、式(4)を用いる。
Red は還元体である金属Mにあたり、固体であるので活量は1、すなわち[Red]=1である。
よって
 E=Eo+{(RT)/(nF)}×ln[Mn+]    ・・・(5)
となる。
oは式(5)において[Mn+]=1のときEであり、これを標準電極電位とよぶ。濃度の異なる2つの電極電位は、式(5)より次のようになる。
 E=Eo+{(RT)/(nF)}×ln[Mn+]   ・・・(6)
 E=Eo+{(RT)/(nF)}×ln[M2n+]    ・・・(7)
 注意 [Mn+]>[M2n+]
式(6)(7)より、濃淡電池の起電力Eは次式で表わされる。
 E=E−E={(RT)/(nF)}×ln{[Mn+]/[M2n+]}  ・・・(8)