物理化学実験室

■第一章 目的と理論


[目的]
水−エタノール系の密度、粘度、屈折率の測定を行う。

[理論]
・密度
ある温度t[℃]における物質の単位容積あたりの質量をその温度における密度という。
すなわち次式で表わされる。
 ρ=m/V[g/sec] ・・・(1)
 m:質量  V:容積
水の密度は、3.98[℃]において0.999973[g]で最高値となる。
そこで比重は4[℃]における水の質量を標準とする。
水の密度の文献値を[引用文献]の水の密度に示す。
この実験では乾燥したピクノメーターの質量W’とこのピクノメーターに蒸留水を満たしたときの重量W を計り、まず容量Vを次式で求める。
 V=(W−W’)/ρ ・・・(2)
 ρ:その温度における水の密度
容量Vがわかれば、そのピクノメーターに未知試料を満たしたときの重量をWとすれば、密度ρは次式となる。
 ρ=(W−W’)/V
  =(W−W’)×ρ/(W−W’) ・・・(3)

粘度
液体の内部摩擦力をfとすると、fは隣接する層の面積と両層の速度の異なる割合、すなわち速度勾配dv/dzに比例する。
 f=η×s×(dv/dz) ・・・(4)
これをニュートンの粘性液体の法則といい、ηは液体固有の値で、粘性係数又は粘度という。
均一な液体が長さlの一様な毛細管を流出するときには、その液体の粘度ηは次式で表わされる。
 η=(π×p×r×t)/(8×l×v)
  =(π×g×h×ρ×r×t)/(8×l×v) ・・・(5)
 η:絶対粘度[Poise]
 p:圧力={液高(h)}×{密度(ρ)}
 r:毛細管内半径[cm]
 t:長さlの管を容積vだけ流出するときの時間[sec]
実際には、水のような標準物質を使って、これと比較して粘度を求める。
水の粘度をηとする。
 η:η=(π×ρ×r×t)/(8×v×l)
       :(π×ρ×r×t)/(8×v×l) ・・・(6)
ただし、r、v、l、hが一定のため、
 η/η=(ρ×t)/(ρ×t) ・・・(7)
となり、最初に求めた密度を使って粘度を知る。

屈折率
物質の重要な物理的性質の1つでもある屈折率nは、入射角をi、屈折角をrとすると、
 n=sini/sinr ・・・(8)
で定義される。
補助プリズムと基礎プリズム(共に屈折率n)の間に屈折率nの液体の薄層(厚さ0.1[mm]程度)をつくる。
補助プリズムから入射した光線は、液層に沿って進んだものを限界として、基礎プリズムに入り、屈折して空気中に出て、望遠鏡に入る。
基礎プリズムからの屈折率βは、望遠鏡を移動し、視野がはっきり明暗に分かれる位置から求められる。
このとき、液体の屈折率nは次の様になる。
 n=sinψ×√(n−sinβ)−cosψ×sinβ ・・・(9)
アッベの屈折計では望遠鏡につけられた目盛は、βではなく、直ちにnが求められるので計算は全く不要である。
アッベの屈折計では、測定範囲はnd=1.3000〜1.7000である。
エタノールと水の各濃度における屈折率の文献値を[引用文献]の屈折率に示す。(15[℃]と30[℃])

※アッベ屈折計について
・アッベ屈折計の主要部分の断面図はFig−1(A)に示したように2つの直角プリズムPi、Prおよび望遠鏡Tからなりプリズムの狭い間隙に測ろうとする液体を入れる。光源からくる単色光は反射板 M によって反射され、まずプリズムPiに入る。このPiの斜面で散乱され液体にいろいろの方向ではいり、プリズムPrの滑らかに磨いた面にあたり屈折され望遠鏡Tにはいるようになっている。
・測定の原理
 Fig−1(B)から明らかなようにプリズムおよび液体の屈折率Nおよびnと∠α、∠β、∠γ、の間には屈折の法則から次の3式が成立する。
  N=sinα/sinβ
  β+γ=A
  n=Nsinγ
上式からβ、γを消去すると、
  n=sinA√(N−sinα)−cosAsinα
となる。すなわちプリズム系を望遠鏡の軸に垂直な軸の周りに回転することにより、屈折率nはαの関数として求めることができる。実際にはプリズム Pr にはいる光が受ける屈折の最大角は臨界角であるから、望遠鏡の視野には臨界角を通る臨界光のためにできる明暗の境界線が一線となって現われる。この明暗の境界線をプリズム系を回転して望遠鏡の視野にある十字の交点に合わせると、目盛Sから直接屈折率の値を読み取ることができるようになっている。アッベの屈折計は屈折率1.3〜1.7の範囲のものが測定でき、精度はD線について0.0002である。