■第一章 目的と理論


[目的]
 水に難溶性の金属酸化物粒子(Fe ,Al,Mn,TiO,SiOなど)を水中に懸濁すると、酸性および塩基性を示し、酸化物表面は負および正の電荷を帯びる。懸濁液の酸塩基滴定により酸化物表面の電荷がゼロになるpH、すなわちゼロ電荷点を求める。
[理論]
 水中の酸化物の表面は、水和によって水酸基に覆われている。Fig−1に模式的に示すように、これには (≡MOH)と、塩基として働くもの(≡MOH)の二種類あり硝酸ナトリウムの溶液中ではつぎのように反応する。

     ≡MOH+Na+フ≡MO-・Na++H+ (1)

     ≡MOH+NO-+OH- (2) 

表面水酸基から、水素および水酸化物イオンが解離して正負のサイト(≡M+,≡MO-)が生成し、これを電気的に中和するために、溶液から負および正が、カウンターイオンとして吸着する。(Fig−2参照)。これらのカウンターイオンは、溶液相に位置して固体表面の電荷(*)と電気二重層を形成し固液表面で電荷が分離している(**)。≡MO-・Na+,≡M+・NO-はその状態を表わすものであり結局、反応(1)、(2)は、H+とNa+、OH-とNO-のイオン交換反応(***)である。ここで≡MOHおよび≡MOHは弱酸および弱塩基なので、反応(1)は、高pH領域、反応(2)は、低pH領域で起こる。これらの反応の進行の程度、あるいは生成する荷電サイトの量は酸塩基滴定によって求められ、酸化物の表面電荷がゼロとなるpH、すなわちゼロ電荷点を決定することができる。


(*):Fig−1、2で酸化物の金属成分の原子価は、4価としている。
(**):酸化物粒子の電気泳動の実験により、酸化物は表面電荷を持つことが確かめられている。
(***):H+とNa+、OH-とNO-の交換比率がそれぞれ、1:1であることが実証されている。 




Fig−1 酸化物/水溶液界面の模式図(1)



Fig−2 酸化物/水溶液界面の模式図(2)

赤領域:酸化物   白領域:水溶液