新エネルギーの創生
地球は太陽系惑星の一つとして誕生し、この瑞々しく豊かな生態系を維持しているが、人間の無作為で無秩序な行為によって化石燃料エネルギーの大量消費が行われた結果、地球環境の汚染と破壊を招いてしまった。化石燃料は、地球の遍歴という過去数億年の時間を要して植物を主体とする生物が化石化したものであり、石油、石炭、天然ガスとして地球に蓄えられたエネルギー源である。太陽エネルギーを受けて光合成によって植物が生長し、それが地変による熱や圧力を受けて、炭化されて地下に蓄積された。20世紀の科学技術の発展により、石油由来の産業が進み、大量に消費した結果、あと少しという枯渇状態を招いている。数億年かかった物をわずか数百年で消費しようとしている。
市民運動の一環としてISO14001が取得され、地方自治体主催でエネルギーフォーラムがいろいろと開催されている。日本は化石燃料を海外に頼っており、脆弱なエネルギー構造となっている。「新エネルギーを創生するにはどうすべきか」という命題が課せられ、討論されているが、明解な解答が得られていない。化石燃料の他には、原子力、水力、風力、地熱などがあり、それらの利用が検討されているものの、画期的な成果が得られていない。
そこで、改めてその命題を考えてみよう。化石燃料は太陽エネルギーを受けた植物の地変によって産出された。身の周りには太陽エネルギーを受けた植物が生長しているが、膨大な時間を要する地変という地球エネルギーを受けない限り化石化しない。化石燃料を産出してくれたのも太陽エネルギーであるが、これだけはあと50億年という地球寿命時間の間、持続的に得られるエネルギーである。「新エネルギーを創生する」という命題に対して、やはり太陽エネルギーを如何に取り込むかを課題にするしかない。そして、その太陽エネルギーを最も効率よく取り込むことができるのが植物である。太陽エネルギーを源泉として大量に収穫・入手できる樹木・海草・微生物などの生物資源(バイオマス)がある。
この論法からすれば、不要になった植物ゴミに石油をかけて高温焼却しているゴミ処分実態は即停止すべき処理法である。有機汚染物質である植物ゴミは、微生物分解を通してエネルギー源となる。生ゴミを燃えるゴミとしてゴミ回収されているが、200世帯程度の生ゴミを集めて燃料電池で発電し、電気エネルギー等として利用できる技術がある。地変を待たなくても新エネルギーが創生できるのである。
[吉村忠与志(福井工業高等専門学校)]