プラスチックの功罪

石油からプラスチックが開発され、20世紀の社会文明の発展に偉大なる貢献をした。プラスチックの特性としての自然には朽ちない丈夫な素材であることを売りに、大量生産・大量消費・大量廃棄することで消費型社会を形成した。その結果、石油資源は枯渇寸前となり、地球温暖化を招いてしまった。

21世紀では、地球環境汚染が人類社会の最重要問題となり、この瑞々しい地球を持続可能な状態で未来に残す責務が生じた。プラスチックは石油由来のものがまだまだ主流ではあるが、生物由来の生分解性プラスチック(バイオプラスチック)が開発され、いろいろなプラスチック素材として利用され始めた。現在、それは石油由来のプラスチックに比べ、1.5倍以上とコスト高であるが、いろいろなものに利用され普及すればコストもリーズナブルとなり、利用しやすくなるものと思われる。バイオプラスチックは、とうもろこしやさつまいもといった穀物のデンプンから合成されるポリ乳酸が多い。ポリ乳酸は、光合成由来の植物から作り出されるものであり、環境負荷の低い物質である。

バイオプラスチックの利用をみると、富士通のパソコン筐体にポリ乳酸が用いられた事例があるが、富士通の試算によると、焼却による廃棄処分を想定している。ポリ乳酸は光合成由来のものであり、大気中への二酸化炭素の排出量は石油由来のプラスチックのものと比べて2/5に相当し、排気されたとしても、大気中の二酸化炭素量のバランスを崩すものではない。
しかし、バイオプラスチックの特性は、生分解性であり、その性質を利用した使用法としては、何といっても食物の包装容器である。石油由来のプラスチックからの、食べ残された包装容器を水洗いしてマテリアル・リサイクルするには効率が悪く、リサイクルマークの付いた包装容器はほとんど焼却処分されているのが現状である。マテリアル・リサイクルできる製品の素材に石油由来のプラスチックを利用して、焼却・埋立処分を想定するものには、バイオプラスチックを活用することが現状での理想的な利用法である。パソコンがリサイクル法でLCA(life cycle assessment)で管理されている今日、パソコン筐体はマテリアル・リサイクルできるプラスチック素材が適しているかもしれない。

(吉村忠与志[福井高専])