おからは廃棄物か資源か

おからは豆腐製造業者によって不要となった豆腐かすである。モノが不要となると,その時点で廃棄物(ごみ)となる。人間はモノが不要となると,ごみ処分をして清掃しようとする。個々に勝手にごみ処分を行うとごみの山となるために,法的規制を余儀なくされる。この場合,「廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行令」が適用される。この一例として,「おから裁判」の判例を挙げる。
被告は,豆腐業者からおからの処理委託を受けて,それを収集し,彼の工場に運搬して熱処理し,乾燥加工することによって飼料や肥料等を製造していたが,廃棄物処理業の認可を受けずにその業務をしていたことで,起訴された。平成11年3月10日の最高裁判決では,おからが上記の施行令2条4号にいう「不要物」に当たり,「産業廃棄物」に該当すると判定され,無許可で廃棄物処理業務を行った被告は有罪となり,罰せられた。

被告は,産業廃棄物業の許可を受けずにおから(産業廃棄物)を取り扱ったことが有罪の判定基準となったが,その結果をなるほどと納得できないのはなぜだろうか。おからは,豆腐業者には産業廃棄物かもしれないが,豆腐かすという植物性残渣であり,良質なタンパク質の品質効率が高く,再利用価値の高いものである。有罪となった被告は,おからの優れたタンパク質源に目を付けて,付加価値をつけて商品化しただけと評価すれば,廃棄物の資源化に社会貢献したことになる。循環型社会を形成すべき21世紀においては,上記の裁判を他人事としていていいのだろうか。

動植物性残渣の取り扱いは産業廃棄物として法的規制を受け,排出した市民からは無責任に扱われ,産業廃棄物業者に任せっきりである。人間は動植物を食した後,食品廃棄物(生ごみ)を毎日排出する。生ごみを焼却処分するには,化石燃料を消費しなければならない。すなわち,生ごみを焼却処分している廃棄物処理は原則として止めるべきである。生ごみでもおからのように品質効率の高いものはタンパク質源(有価物)として再利用すべきである。生ごみ(不要物)にも有価物とするための分別処理が必要であり,若干の付加価値を付ければ再利用できるものは科学技術の手で資源化することが重要である。そしてそこに,科学技術の使命がある。

〔吉村忠与志(福井高専)〕