夢を持てる科学技術教育
バブル成長期には世界のリーダだった日本の科学技術のランクも今や急降下状態で、景気低迷の一途を辿っている。小泉内閣が世論に押されて構造改革を成し遂げるまでは、景気回復はまず無い。賃金の高い日本国民を雇用せず、安いチャイニーズパワーを利用するが余り、日本の科学技術は海外流出されている。衣料メーカのユニクロの成功がその顕著な例である。
景気が悪く就職条件も厳しいが、大学を出ても就職もせずフリータとなる若者が多い。将来に期待が持てずに場当たり的なアルバイトを続けている。しっかりとした職業観が育成されていない。一方、日本の科学技術を担う技術者を育てる大学は構造改革の波の中で「国立大法人化」と「遠山プラン」の難題に四苦八苦で、生き残りのためにいや応なく競争原理の渦に巻き込まれている。科学技術立国でしか生き残れない日本の若者の「科学技術離れ」は深刻である。特に、教員養成系大学のリストラはますます初中等教育での「理科離れ」を加速させているように思えてならない。教育を担当する教師がリストラの悪夢に合って身分の安定もない状況では、ゆとりある夢も抱けず、学生にも夢を語れない現状にあると思う。金太郎飴方式で学生を輩出しているうちに、レジャーランド化を許した大学教育にも責任はある。これまでの横並び方式で、個性の成長やエリート化を望まなかった教育プログラムが改革の対象である。今回の大学改革は、世界に通用する大学の教育・研究レベルを上げることが目的とされる。この改革が成功したとして、個性の尊重による複線的で複眼的な思考を育成し、独創性豊かな夢を語れる教育を実践して、心にゆとりある人間形成が営めるような人材育成を推進してもらいたい。
子供の頃は身近なもの、例えば先生になりたいとか、医者になりたいとか、夢を語ってくれる。しかし大学に進む頃には、語れる夢を無くしていくようである。大学に学んで大志を抱けるようにするポイントは、日本人の器用さ(巧み)を売りとする科学技術の応用である。この応用科学における巧みは世界に通用しているものであり、これこそ夢が持てる科学技術である。科学技術教育において、我々の巧みの技を磨き、世界に打って出ようではありませんか。
吉村忠与志(福井工業高等専門学校)