インターネットと工学倫理

先般、爆弾を作り友人の家を爆破しようとした男が失敗して大やけどを負い重体になった事件が起きた。動機は友人関係の劣等感からの恨みらしいが、爆弾を手作りし暴発した。警察の捜査で、犯人の自宅から、消火器や鉄パイプなどを使った爆発物が9個見つかっている。爆弾の製造法については、「インターネットで知った」と供述していると言う。

学校のある授業で、学生にある課題を出すと、インターネットで調べてレポートを作成し提出する学生が居る。その様子を鑑みるに、極めて安易にその内容を信じて、疑うことなくその内容を遂行しようとする者が多い。先の犯人は爆弾の作り方をインターネットで調べたということであるが、どのようなサイトを見たのか、どのように作ったのか、知らないが、他人に迷惑をかける爆弾を作ろうと思えば、素人の誰でもが作ることができる爆弾サイトがあるらしい。忌々しきことである。科学技術を素人に紹介するためのサイトが存在する中で、インターネットの功罪を考えるべき時がきている。インターネットでも、犯罪を誘発するような行為が許されるはずがない。犯罪幇助罪が成立すべきであるが、今回の事件でも、インターネットの爆弾サイトが爆破幇助罪で摘発されたというニュースは届いていない。まさに、無責任である。インターネットでの科学技術の紹介サイトにも工学倫理が必要であり、今回の事件では社会倫理的責任を感じなければならない。

インターネットでの紹介記事については、すべてのネットワークユーザに公開され、技術的に未熟な素人技術者でもやろうと思えば出来る。先の爆弾犯人のように化学的な知識不足でも爆弾を作ることができ、物を爆破することができる。爆弾サイトはインターネットの罪(悪)のほうの一例である。ノーベルがダイナマイトを発明し科学技術に貢献したが、人類を不幸にする戦争に悪用されたことから後悔し、科学技術が人類の安全・福祉に悪用されないような発展を望み、ノーベル賞を設立した。

インターネットの記事内容が公開事項である限り、Webサイト主催者には工学倫理責任がある。インターネット公開をエビデンス(evidence)とする通念が定着しようとする中で、何でもかんでも公開できるインターネットの体質に問題があると思われるが、インターネットはなくてはならない必須アイテムであり、公開内容に関する工学倫理をもってWebサイトを主催しなければならない。

(吉村忠与志、福井工業高等専門学校)