すべてに必要なPDCA(スパイラルアップ)
以前に「効率主義からの脱皮」の中で、スローライフで豊かな価値観を見出すことを提案した。企業における品質保証のISO9001認証に始まり、教育界も卒業学生の品質保証のJABEE認証と機関別認証評価に心血を注いでいる。その教育改革の姿はややもすると、ハードルを高くした目標に設定されていることが多い。外部からの審査による認証基準を意識する余り、オーバーロードとなっていることがある。認証評価の審査は、より良いシステムを構築し、それが運用されているかをチェックするものであり、その定期的チェックによってそのシステムがスパイラルアップされることを目指すものである。教育システムのマネジメントの基本は継続的な改善であり、PDCA(Plan→Do→Check→Action→)サイクルが働いていることである。
一つの例として、アドミッション・ポリシーという欄が学生募集要項に追加記述され、審査の重要な要件となっている。そのために、認証を受けようとする機関では新たにその欄を設けて新規な学生募集を行おうとしているところがある。新たな基準を設定することはこれまでにないハードルであり、PDCAサイクルでスパイラルアップするには数年を要してしまう。教育機関が学生を募集してある専門科目を履修させている高等教育機関であれば、発足当時からアドミッション・ポリシーは絶対あったはずである。ただ、そのような認証・審査がなかった時代ではそれをアドミッション・ポリシーと言わなかっただけで、入学者に対する受け入れ方針は必ずあるものである。新しい学生募集として言葉を選んでみたら、アドミッション・ポリシーなる説明欄ができただけである。これは入学者受け入れ方針のPDCAによるスパイラルアップの結果に過ぎない。スパイラルアップには最新バージョンにおいてそのシステムが運用されていることがチェックされる。故に、PDCAサイクルの一周のアップ率を高く設定すると、それを維持するのに大変なことになる。
スローライフの中でのアップ率は1%でもよい。理想は高いことに他ならないが、堅実な路線での、2歩進んで1歩下がることも、足が地に付いたスパイラルアップを目指して改革も審査も実施されるべきである。
[吉村忠与志(福井高専)]