テレビの買い替えは必要か

 

テレビ放送局では20065月から地上デジタル波が発信され、それに伴うテレビの買い替えが当然のようになり、従来までのテレビ受像機は不要となり、まだ使えるものなのにごみとなりつつある。捨てられるテレビは昨日まで立派に役目を果たしていたにもかかわらず、寿命を終えさせられるのである。前回、「寿命の長い製品づくり」を提案したばかりなのに、今回の出来事は残念である。

科学技術が発展し、最新のテレビ技術が利用者と関係ないところで技術の押し売りをされているようである。最新のハイビジョン技術に追従しようとする利用者の心意気は買うところであるが、最新機器に対する消費者心をくすぐるようで納得できない。

いずれ近いうちに現在の地上アナログ波が放送されなくなるようであるが、壊れてもいないテレビが使えなくなるのは困る。デジタル放送をアナログに切り替えるだけの安価な機器を装備すれば見られるようにはなると思われるが、現有のテレビ受像機を壊れるまで利用したい者にとっては無用の出費であり、現有機器のもったいない、損失である。

地上テレビ放送のデジタル化は、世界的な規模で急速に広がりつつあり、時代の流れかもしれないが、NHKを中心とする国策で推進していることが気がかりである。現在市販されているデジタルテレビチューナを家電メーカ市場で見ると、約6万円程度と高価である。地上デジタル波にはネットワーク対応という新しい技術が上乗せされており、テレビとインターネットが融合することは望ましい方向ではあるが、一般市場の動向も追試していただきたい。地上デジタル波の放送開始で、テレビを介した情報獲得の展開がどのように進展・普及するのかが争点である。

最近の技術発展における争点として、携帯電話の多機能化が目まぐるしい。電話と言えば音声情報をリアルタイムに交換することが原則であるが、メール機能が常備されたことから文字情報の交換も一般的に普及している。しかし、それ以外の機能はほとんど利用していない。いろいろな機能があり、出来ることも知りながら利用しないのが現状である。ここで危惧することは、テレビ受像機にも携帯電話以上の多機能が付加されるであろうが、利用者はテレビ局から放送される映像情報を獲得するだけなら、従来までのテレビ受像機で充分であり、地上デジタル波の対応だけのために買い替える必要はないはずである。その対応こそ、もったいない技術の継承であり重要である。少しでも寿命の長い製品を利用するために。

 

[吉村忠与志(福井高専)]