寿命の長い製品づくり
21世紀になっても科学技術によるものづくりは、安い製品を売り、数年で製品の寿命を終えるように、すなわち、新製品に目がいくように設定されている。典型的な事例がパソコンであり、3年も経つともう古くなってしまう。最近、パソコン筐体が生分解性プラスチックで作られ環境にやさしいとかいう、謳い文句でセールされているが、「何を考えているのだ!」とメーカ側に投げ返したいところである。
循環型社会が構築され、ゴミの分別やリサイクルが進んでいるようであるが、リサイクルには費用がかかり、環境負荷はほとんど縮小しないのも事実である。資源の有効利用からできるものはリサイクルすべきであるが、パソコン筐体を生分解性にして野原にでも捨てようとでもするのであろうか。
パソコンを、使い捨てるよりメンテナンスして長く使うという思想は生まれないのだろうか。パソコンこそ日誌のようにブログを溜めるものであり、ずっと使い続けても問題はないものである。メーカによっては部品がカバーできない所為か、故障して修理に出すと購入価格の半分ぐらいを請求され、修理を諦めて新製品を当たるようになる。新しいもの好きのユーザの消費懐を見て製品価格が設定され、物資が回転するような消費思考が社会の根底にあるのである。たくさん売れれば儲かるという経済である。
壊れてもメンテナンスに費用のかからないリユースシステム(Reuse system)が組まれ、長く使える製品システムの開発こそ、持続可能型社会の科学技術であり、「このパソコンは10年使っています。」と言えるようなパソコンが出てきてほしい。「できるだけたくさんものを売り儲けたい。」という消費的経済思想から脱却し、寿命の長いものを製品として出した誇りと情報公開によるメンテナンス(部品の共通性)が当たり前という時代を目指して、リユースの科学技術を発展させようではないか。
[吉村忠与志(福井高専)]