科学技術立国は大丈夫か

 

工業高等専門学校で教鞭をとっていると、少子化問題による中学生の激減に伴い、高い入試倍率の確保に努めている。最近は、中学校訪問どころか、小学校や公民館にも出前授業に出かけ、高専の広報活動を実施している。そのような中で、文部科学省による学校基本調査のデータを見て愕然とした。それは、図1のようなものである。大学全体での大学生数において、理学部と工学部を合わせた学生数の年度推移をみると、顕著な減少傾向にある。理工系離れに歯止めが立っていない。

1 理工系大学生数の推移

出典: 文部科学省「学校基本調査」

 

日本人に、理工系のカリキュラムを通して技術教育される方々の数が減少していることは忌々しきことである。このままでは科学技術立国は成立するどころか、21世紀の科学技術を担う若者がいなくなる恐れがある。小中高で理科離れが叫ばれて、科学・技術者も育てられなくなった。このことを翻せば、文系のカリキュラムを受講した方々が日本のリーダーシップをとることになる。理工系から文系の仕事に代わることができても、文系から理工系に代わることはできない。

金さ出せば、世界の科学技術が買えると思ったら、科学技術立国は成り立たない。理工系に進めば、将来に夢をかなえることができる施策が急務である。

[吉村忠与志(福井高専)]