日本人はフード・マイレージを考えるべきだ

 

2005年の8月号に「飽食は地球を破壊する」というコラムを本誌で報告したが、日本でのフードロスは世界ダントツである。環境負荷を問題とする指標として、フード・マイレージ(Food Mileage)があり、それは輸入相手国からの輸入量(t)と距離(国内輸送を含まず, km)を掛け合わせたもので、この数値が大きいと地球環境への負荷が大きいと考えられる。すなわち、輸入食品を入手するためにはたくさんのエネルギーを使っており、大きな環境負荷を与えていることになる。

農林水産省の試算によると、日本の数値は飛びぬけて大きく、他国に比べて際立って大きいことを日本国民は自覚しているのだろうか。2001年のデータで、国民1人当たりのフード・マイレージは、7,093(tkm)であり、韓国が6,637(tkm)、米国が1,051(tkm)、英国が3,195(tkm)、ドイツが2,090(tkm)、フランスが1,738(tkm)と報告されている。この数値は国民1人当たりのもので隣の韓国とは上位に肩を並べているが、日本の人口が韓国の2.6倍ですから、日本全体として9002(tkm)というフード・マイレージ(FM)を記録している。国民1人当たりのFM値は食に対する贅沢指数であり、飽食を裏付けるものである。輸入国から食料を買い、輸送費を払って手に入れたものを飽食の果てに残飯として無駄に廃棄している。

外国の作物が安いからといって遠くの国から輸入して飽食をする。その結果、FM値は世界最大を示していても罪悪感すら感じない。このままでいいはずがない。貨幣価値が違い、生活習慣が異なることで違和感すら感じないのであろうが、地球環境は瀕している。京都議定書など、環境問題にはいろいろと提案国になっているはずが、食に関してはもっとも感覚が鈍い。たまたまBSE問題で、安い米牛肉を購入せずにいるが、日本での食糧自給について地球環境問題から考えるべき時期に来ている。FM値を下げるには、日本の自給率を上げる。すなわち、地産地消の農業政策を推進することこそ、地球環境にやさしい国策なのである。地元にある農作物を育てて食し、持続可能な足元の宝物(資産)を再認識し活用する仕組みを考える。

フード・マイルズ(Food Miles)運動は食物の移動により排出される二酸化炭素の削減を目指したものであるが、農林水産製作研究所が定義したフード・マイレージという指標を深く考え、日本がダントツ世界一位の座から降りたいものであり、その努力を国民一丸となって実施しなければならない。

(吉村忠与志[福井高専])