物質の回帰システム

 

環境負荷の低減を目指して、使用済みとなったもののリサイクル問題が環境ビジネスとの対応の中でろいろいと提案されている。工業製品の環境負荷を評価する手法として、ライフサイクルアセスメント(LCA)がある。これは製品の一生評価で、製品のゆりかごから墓場まで環境負荷を評価するもので、主な規定はISO14040シリーズである。

メーカによって製品が設計され、製造される。そして、ユーザに使用され、廃棄される。その時、その製品はゴミとなるわけであるが、設計の段階で原料・素材に戻されることを想定しており、物質が循環する。これは工業製品のライフサイクルであるが、物質を製品とするメーカと、ゴミとするユーザとを繋ぐ役割が考えられていない。

メーカは原料に付加価値を付けて製品とし、企業利益を得ようとするが、ユーザは使用した製品の価値が消失した段階で廃棄しようとする。廃棄処理料金がかかるものは環境負荷を考えず投棄してしまう。まさに、現代のゴミ問題である。

そこで、工業製品の循環システムを図のように提案する。メーカによって作られた物質はストアに出荷され、ユーザに購入される。不要となった段階で廃棄される物質をユーザはストアに運ぶ。持ち込まれた物質はストアからメーカに回収される。これを物質の回帰システムという。

物質のライフサイクルの管理を推進するために、循環の中心を務めるストアの役割は大変重要である。家電リサイクル法のように、不要となったもののメーカに引き取りを義務付けているが、家電製品だけではどんどんゴミが増えるだけである。すべての物質に対して回帰システムの運用を提案する。ストアが製品として販売したものはすべて対象とするものであり、新しい環境ビジネスの始まりである。そして、製品開発には、廃棄後を見据えた設計思想の元で、環境負荷を低減するだけでなく、材料・部品等のリユースによる新たな利益の源泉となるような回帰システムを推進する必要がある。

[吉村忠与志(福井高専)]