地球環境に赤字を作った先進国

 

以前の報告の中で、地球の適正人口は50億人であるとした根拠に、ワケナゲル(M. Wackernagel)らのエコロジカル・フットプリント(EF)を挙げた。世界人口は2005128日現在6,415,208,622人で、人口増加の傾向は止まるところを知らない。14億人の過剰人口もどんどん増大している。そして、地球の過去の遺産である化石燃料が枯渇寸前であることを知りながらも食潰し続けている。

人口でも自然資源でも既に赤字経営となった地球環境は、このままでは持続可能でないことを誰もが理解できる。しかし、人類の活動は人間のエゴの下でどんどん拡大している。日本経済は発展し世界上位というバブルを経験して以来、先進国として、経済大国のリーダーとしてG8の責務を担っている。G8のいずれの国家もEFでは赤字となっており、開発途上国がその赤字分をカバーしてくれていることを理解しなければならない。いつまでも勝ち組として飽食を続けるわけにはいかない。64億人のうち8億人が飢餓状態である現状を直視し、開発途上国からの経営的搾取はできるだけ減少させていかなければならない。そして、地球生態系での公平・平等を確保できる努力を払って、生態学的赤字の解消に努めるように人類は活動すべきである。

地球環境は、人類すべてと地球上に生息する生物の共有物であったにもかかわらず、その赤字経営を許した科学技術は、節度なき利潤と利便性を先進国に与えてしまった。EFの大きさは各国家間の不公平さを明瞭に示している。これからの科学技術は、この赤字解消のために環境保全とその修復を最優先するものでなければ、先進国でのEFの大きさを拡大していくだけで、地球での人類の未来はない。発展途上にある後進国を貧困と位置付けることがあるが、生態学的には黒字であり、豊かで持続可能な生態系を有していることが多い。自然と向き合う生活体系を維持している。時には天変地異のいたずらによって生命の危機に遭遇することがあるが、そこでの自然は再生している。

食糧自給率が四割以下という日本では、地産地消による自然再生事業を実践するための科学技術の運用を目指し、EF指標でいう生態学的赤字を解消すべき努力が必要である。

 [吉村忠与志(福井高専)]